話題のNFT

●NFTは、今まで価値の担保が難しかったデジタルアートなどに唯一無二の価値を担保するブロックチェーンを使った技術に裏付けられています。Non-Fungible Tokenの頭文字をとったもので、「非代替性トークン」と呼ばれていますが、このようなNFTの細かい定義は、当ページ後半をご参照いただくとして、NFTのことをまだご存じでないかたは特に、まずは実例からご理解されたほうが分かりやすいかと思います。

●NFTは、2021年からブームになり始め、高額アイテムの落札などで話題を呼んでいるジャンルです。

2021年のNFTブームの火付け役となったのが、Beepleという作家が作成した「最初の5000日」というデジタルアートで、オークションにて75億円で落札されました。

●また、世界で最初のNFTの一つと言われる「CryptoPunks」は、24×24ピクセルのキャラクターがアルゴリズムで10,000点生成されたもので、すべて異なるデザインのピクセルアートのNFTアートになっており、そのデザインによってレア度と市場価格が決まり、2022年5月現在の最高購入額は「CryptoPunk #5822」の約27億円です。

●それ以外のデジタルアートのNFTで高額取引で話題を呼んでいるのが「Bored Ape Yacht Club」です。取引日のドル円やイーサリアムのレート等で順位や日本円換算の金額は上下しますが、 「#2087」が約2億6000万円、「#3749」が3億2000万円で購入されています。

●デジタルアート以外では、ツイッター創業者のジャックドーシー氏の最初のツイートが約3億円で落札されたことも話題を呼びました。

●最近話題のメタバース関係では、「The Sandbox」内の土地「LAND」もNFTであり、それらを購入する動きが日本企業の間でも広がっており、最近ではスクウェア・エニックスやエイベックス・テクノロジーズ、SHIBUYA109エンタテイメントなどの参入が見られます。

これらのLAND上に建造物を建て、ゲーム的な要素などを始め、様々な機能を配置し、ユーザーに使用してもらうことで利益を出すことを計画している企業も多く存在し、水面下で様々なプロジェクトが進行しているようです。

The Sandboxでは一番小さい単位のブロックでも、100万円以上で取引され、アメリカの有名ラッパー「Snoop Dogg」とコラボした土地の近隣のLANDは5000万円のものもあり、高値が付きやすい傾向があります。

●NFTはデジタルアートだけでなく、あらゆるジャンルに広がっており、実在する絵画に紐づけされた鑑定書的な意味を持つNFTや、アニメのセル画の購入権のようなNFT、音楽、映像関係でもNFTが大手の間でも急速に拡大しつつあります。

●ファッション業界でもアイテムをNFT化する「デジタルファッション」での参入が増加してきており、これらはメタバース上のみ活用できるファッションアイテムとして、今後も注目すべきジャンルだと考えられます。

●ところで、ご紹介してきたNFTは、どれも高額なものばかりでしたので、価格は安いものから高いものまで千差万別です。有名なものでも1000円ほどのものもあります。

●また世界で最もユーザー数と取引高が多いOpenSeaで出品すれば売れるという訳ではありません。

●さらに価格が安いからと言って売れる訳ではありません。設定した価格に関係なく、全く売れないもののほうが多いのが実情です。売れるには、それなりのストーリーや価値をつける努力が求められるのです。

デジタル・コンテンツはコピペし放題

●土地や建物、車などは登記簿や車検証などに所有者が明記されています。これらは法律で守れ、文書として明確な所有権が国によって保証されています。

しかしデジタルアートやデジタル写真、音楽データ、動画などの「デジタル・コンテンツ」はどうでしょうか?まず、これらはコピー(複製)や改ざんが簡単にできてしまい、元データの本物がどれであるかという証明が非常に困難です。

●そして所有者が不明確です。音源データもダウンロードしたmp3データなどは複製され、第三者にデータを転送して拡散することができますが、元データと転送されたデータに違いがありません。そして転送された先の全員が「所有者」になっているとも言えます。

ここがデジタル・コンテンツを扱う場合の課題だったのです。

NFTの何がすごいのか?

●NFTは、これらデジタル・コンテンツが抱えていた課題の多くを解決する大変重要な技術革新となります。

つまり、コピーや改ざんが不可能であり、デジタル資産として、どれが本物であるかを証明でき、さらに所有者を明確にすることができるのです。

NFTは一度生成したものは、後から改ざんができません。またコピーが不可能です。
NFTは1つ1つブロックチェーン上に展開していくものなので、デジタル画像のように、コピー&ペーストや改ざんが出来るものではありません。

●例えば、マーケットプレイス内の画像を使用して、同じNFTになりすまして発行したとしても、ブロックチェーン上にはすべての履歴が残っており、誰でもいつでも無料で閲覧することができ、本物と偽物を見分けることが容易にできるのです。

またデジタル資産として「本物の証明」ができることにより、それぞれのNFTが唯一無二の存在であり、実物の絵画同様に価値が認められ、結果的に希少性の高いコレクションは高値が付きやすいのです。

2次流通からの収益が見込める

●NFTのもう一つ特筆すべきところは、製作元が2次流通からの収益を見込める点です。

転売時における収益のことです。

例えば絵画を例に説明します。実物絵画をAさんという人が購入したとします。
この場合は1次流通ですので、代金はAさんが画家に支払います。

次にAさんがBさんに転売した場合はどうでしょうか?
これは2次流通と呼ばれています。

BさんはAさんに代金を支払いますが、一般的に画家さんには収益が還元されません。

以下同様にBさんがCさんに転売した時も同様です。

このように、実物絵画や音楽データ(CD、DVD、Blu-Rayなど)を制作したアーティストや企業が販売した1次流通においては制作元に収益は行きますが、2次流通などの転売市場においては収益は還元されません。

●これを解決してくれるのがNFTです。
NFTの特長の一つですが、2次流通であるAさんからBさんへの転売においても販売額の一部が収益として制作元へ還元されます。

BさんからCさんの転売においても同様です。
転売が成立するごとに、最初に決めたパーセンテージでロイヤリティーが作者に還元され続けるのがNFTなのです。

これは「ロイヤリティー」と言われる還元金であり、一般的には0~10%の間で製作元が自由に決めることができます。

●ロイヤリティーは高くすれば作者のメリットである反面、転売した人達にとってはその分差し引かれるのでデメリットになりますので、この数値を高く設定すれば良いということではありません。
もちろんゼロ%にすることもできます。

●2022年5月現在、最終的に3億2000万円で売れた前述のBored Ape Yacht Club#3749を例に挙げると、一人目のTDHDさんに2021年7月16日に1次流通で日本円換算で約2170万円で販売。売上はマーケットプレイスへの手数料を差し引いた後に製作元であるYuga Labs LLCに仮想通貨(ETH)で入金されます。

ちなみにNFTはオーナー、販売・購入者は、ユーザー名程度ですが、その販売履歴をマーケットプレイスやブロックチェーン上で確認できます。

そしてTDHDさんが同年8月11日にboothyさんに約1億4000万円で転売。

製作元のYuga Labsはロイヤリティーを2.5%に設定しているようですので、この段階で約1億4000万円の2.5%である約350万円相当のETHがYuga Labsに入ります。

それから約1か月後の9月6日に前述のメタバースで有名なTheSandboxGame社が約3億2000万円で購入。同様にロイヤリティーとして2.5%の800万円相当のETHがYuga Labsに入ります。

ちなみに転売したTDHDさんやboothyさんには、マーケットプレイス手数料とYuga Labsへのロイヤリティーを差し引いた金額相当のETHが入ります。

大手企業が続々参入

●日本企業は海外に比べて、NFTやメタバースへの参入が遅れているようですが、独自のマーケットプレイスの展開やグローバル企業がNFT、メタバースの分野へ参入しております。

世界市場において、マーケットプレイスでは「OpenSea」がユーザー数、取引高では断トツの一位です。「Rarible」も非常にユーザー数が多いマーケットプレイスです。

●日本国内の主要マーケットプレイスは、クリエーター登録が必要なところが多く、誰でも気軽にNFT発行をできるOpenSeaなどと比べると、必然的に取引高は小規模になっておりますが、審査を受けたクリエーターだけになるので、それだけ質の高い作品が多いということになります。

●LINEのマーケットプレイスなどは独自のブロックチェーン上で運用しているなど、安易にガス代の高いイーサリアム上で展開せずに、技術力でも勝負しているところも存在します。

●グローバル企業では、主要なスポーツ関連メーカーがNFTやメタバースへ積極的に参入しています。

●Nikeは、バーチャルスニーカーの制作を手掛けてきたRTFKTを買収し、コラボNFTを発売しています。
またアディダスは、前述のBored Ape Yacht Clubとのコラボなどにより、メタバースへの参入を行っております。

●ソフトバンクグループのVision Fund 2は2021年11月に、メタバース事業としてThe Sandboxについて、100億円(9,300万ドル)の調達ラウンドを主導するなど、積極的にメタバース関連事業への出資を行っています。

●ファッション関係ではグッチやルイビトンなどもメタバース内の「デジタルファッション」のNFTを導入しています。

●これらはまだまだ試験的な段階ではありますが、メタバースも含めて間違いなく市場規模が拡大する分野でもあるNFTにおいて、今後は参画しない企業は取り残されるか、少数派になってゆくものと思われます。

NFTとブロックチェーン

●冒頭でも説明させていただいたように、NFTはNon-Fungible Token(非代替性トークン)の略です。

「非代替性」とは、何か別のものを代わりにすることができないトークンであり、「ブロックチェーン上で発行された唯一無二のトークン」になります。

●NFTを発行するブロックチェーンは、主にイーサリアムやポリゴン※、ソラーナなどが主です。
(※ポリゴンはMATICチェーンとも呼ばれます。)

●イーサリアムは、「レイヤー1」のブロックチェーンと呼ばれ、ビットコインやソラーナなどがレイヤー1です。

他のブロックチェーンを必要としない、ベースとなるブロックチェーンですが、問題が生じた場合の改善が難しいのが特徴です。

その解決策として後述する「レイヤー2」があります。

●イーサリアムはブロックチェーンが安定はしていますが、圧倒的に取引数が多いためにトランザクションが混雑し、高い手数料を払う取引を優先するために手数料(いわゆるガス代)が高騰していることが問題となっております。

●例えば1000円のNFTを販売するのに、曜日や時間帯によって5000円~30,000円のガス代がかかることは日常茶飯事です。

●また別ページの「独自コントラクトとは?」でも説明しておりますが、イーサリアム上で独自コントラクトのNFTのコレクションを発行する時に、5~8万円、もしくは運が悪いとそれ以上ガス代がかかる場合があります。さらに一つ一つのNFTを発行(ミント)する時にもガス代がかかってきます。

●先日(2022年4月30日)、Bored Ape Yacht Clubを運営するYuga Labが「Otherside」という新メタバースを立ち上げ、その土地購入の権利を保証するNFT(Otherdeeds)の発売時におけるイーサリアム上での取引の際に、前代未聞級のガス代の高騰が引き起こされたのです。

この「Otherdeeds」というNFTの土地購入権は75万円ほどだったのですが、ガス代だけで80万円~180万円かかったケースがあったようです。
参加者の中にはガス代だけ払って、結局土地購入権は購入できなかった人もいたようです。
(その後、購入できなかった人達にはガス代の返金がなされたようです。)

●このような理由で、最近ではポリゴンチェーンを取り入れるプロジェクトが増えております。
海外大手マーケットプレイスのOpenSeaやRaribleではすでにポリゴンチェーンに対応しております。

●ポリゴンは、「レイヤー2」と呼ばれるブロックチェーンであり、イーサリアム上に存在するイメージのブロックチェーンであり、イーサリアムとも互換性があります。

ポリゴンチェーンはイーサリアムとは違い、取引がより高速化され、手数料が圧倒的に安価であるというメリットがあります。手数料(ガス代)は、一回あたり数円と、多数のNFTを発行しても、ほとんど経費がかからないのも人気の理由です。

渋滞しているのに料金を取られる一般道がイーサリアムチェーンだとすれば、料金はほとんどかからない渋滞の無い高速道路がポリゴンチェーンといったイメージになるかもしれません。

NFTと仮想通貨の違い

●ここでビットコインなどの仮想通貨とNFTの違いを整理しておきます。

NFTと仮想通貨は同じブロックチェーン上に存在するものではありますが、主に「代替性」という部分で異なります。

●NFTとビットコイン(BTC)などの仮想通貨との一番の違いは、この世に同じNFTが存在しないのです。

●ビットコインやイーサリアム(ETH)は、同じものが複数枚存在します。

ビットコインなら最大2100万枚と上限はありますが、マイニングされたものが、市場に流通していきます。

●それら仮想通貨は所有者が自由に分割して保管や送金ができます。

●例えばAさんが所有しているビットコインが、10BTCあるとします。Bさんも10BTC所有しているとします。あまりそういう機会は無いと思いますが、これらをお互いに、送金し合っても、結局同じなので問題ありません。通常のお金と同じです。

この場合、2つに分けて、10BTCを2回に分けてAさんがBさんに、5BTCずつ送金することも可能です。逆にBさんは5回に分けて、2BTCずつ送金すれば結局同じです。

●これに対してNFTは分割ができないために、2つや3つに分割して販売するとか、分割して他のウォレットに送ることはできません。

またNFTは、替えが効かないので、他人と送付し合うには、それなりの合意や支払いなどが必要です。

●最近ではNFTの実例として、不動産NFTの分割販売というのを目にすることがありますが、そのような事例ではNFT化する前に不動産を分割し、それぞれをNFT化しているはずですので、決してNFT化された後に分割したものではないのです。

NFT化と分割の順番にご注意ください。

●以上、「NFTとは?」について解説してきましたが、このページだけではすべてを解説することはできませんが、最近注目されている「独自コントラクト」や「共有コントラクト」についての詳しい説明は、こちらのページにて詳しく解説しておりますのでご覧ください。